開発事例:FA制御開発
(工作機械の移設検知)
株式会社イワシタ 様
「海外向け工作機械に必要な移設検知ユニットのソフトウェアを
シーイーシーが短期間で開発。輸出時のスムーズな許認可と
海外向け工作機械のオーダー増を期待しています。」
航空機分野、建築分野、鉄道分野、自動車分野、環境エネルギー分野など多くの分野でオーダーメイド工作機械を展開する株式会社イワシタ様。今回、工作機械に搭載する移設検知ソフトウェアの開発をシーイーシーにご依頼いただきました。代表取締役社長 岩下 大介氏、技術部 部長 石田 雅也氏に、ソフトウェア開発をシーイーシーに依頼された経緯と効果について詳しく伺いました。
導入ポイント・導入効果
- 自社工作機械の輸出に向け準備を整えることができた
- 専門外の部分を外部委託、リソースを本来の設計・製造に集中
- 短期間でソフトウェアが完成、工作機械の納期に間に合った
工作機械の海外輸出展開に向け、移設検知ユニットの搭載を決断
許認可が厳しい海外向け工作機械
株式会社イワシタは福井県福井市で業務を展開するオーダーメイド工作機械メーカー。70年以上にも渡って製造し続けているフライス盤のノウハウを軸に、現在はアルミ長尺材加工機や特殊工作機械・専用機など、顧客のニーズに合わせたオーダーメイド工作機械を中心に製造している。
「製造の内訳は約3割がオーダーメイド、約7割が既製品のフライス盤となります。主力のオーダーメイド工作機械は、綿密な打ち合わせから設計、製造を経て約半年が納品の目安。設計、製造のボリュームによっては1年を要する工作機械もあります。」と代表取締役社長岩下 大介氏は語る。同社が製造するオーダーメイドの工作機械のほとんどは国内向けだが、近年は商社からの依頼で海外向けの工作機械を受注する機会が増加してきた。ただし海外向けの場合、工作機械は大量破壊兵器の製造工程に使用される可能性があるため、厳しい輸出規制がある。
「製造に注力したい当社としては、許認可の申請手続きに精通する商社を通じ、間接輸出で対応しています。とはいえ、申請手続きのノウハウを持っている商社でも、許認可を得るには世情によって2カ月以上かかる場合もあります。今後、さらに輸出規制が厳しくなると言われているなか、よりスムーズに許認可を得る手段を講じなければなりません。それが移設検知ユニットの搭載でした。」(岩下氏)
株式会社イワシタ
代表取締役社長 岩下 大介氏
移設検知ユニットの搭載を決断した理由
移設検知ユニットとは工作機械の移設を検知するためのセンサーで、契約上の納品先から第三国への不正移動を防止する目的の機器。複数搭載するカウンターが工作機械移動時の角速度を監視し、異常を検出して工作機械が移設されたと判断すれば、工作機械のコンピューター数値制御(CNC:Computerized Numerical Control)の稼働を禁止することができる。
「数多くの台数を海外に輸出する大手工作機械メーカーの場合、ほとんどの製品に移設検知ユニットが搭載されていますが、我々のような小ロットのオーダーメイド工作機械メーカーは、コストなどの問題で搭載に踏み切れませんでした。しかし、業務を拡大していくためには海外市場にも目を向けていく必要があります。そこで、今後納品する海外向けの工作機械には移設検知ユニットを搭載することを決断したのです。」(岩下氏)
移設検知ユニット搭載にあたりソフトウェア開発の課題が発生
開発するソフトウェアの専門性・難易度が高く自社では対応しきれなかった
ところが、移設検知ユニットの搭載には大きな課題があった。移設検知ユニットを提供するCNCメーカーは、セキュリティ上の観点からソフトウェアの開発に携われない。つまり、移設検知ユニットのソフトウェアは自社で用意しなければならないということだ。
「知見のない組み込みソフトで作成する移設検知ソフトウェアを短期間で自社開発するのは、生産業務を考えるとほぼ不可能。早急に外注先を探す必要がありました。」と技術部 部長 石田 雅也氏は語る。同社は、移設検知ソフトウェアを開発できる SIerについてCNCメーカーに問い合わせ、その際に紹介されたのがシーイーシーだった。
「以前、CNCソフトウェアの開発に携わっていただいた経緯があり、シーイーシーにはCNCの知見と確かな開発力があることを知っていました。今回、早々に見積りをいただき、妥当なコストであると判断できたため、シーイーシーに移設検知ソフトウェアを依頼することにしました。」(岩下氏)
株式会社イワシタ
技術部 部長 石田 雅也氏
高い開発力で納期通りにソフトウェアが完成
シーイーシーのソフトウェア開発力を高く評価
移設検知ソフトウェアの開発は、出荷の都合からタイトなスケジュールだった。シーイーシーには2020年10月後半に発注後、同年12月には完成させたい旨を伝えた。コロナ禍ということもあって打ち合わせはほとんどがリモートだったが、同社の希望通り、12月には移設検知ソフトウェアは完成した。今回、シーイーシーが開発した移設検知ソフトウェアは次の2つだ。
①検知ソフトウェア:
工作機械が移設された場合に移設検知ユニットが発信するカウンター値の異常を検知し、CNCの稼働を禁止するソフトウェア
②解除ソフトウェア:
第三国や第三者による移設ではないことが確認された際、CNCの稼働禁止を解除するソフトウェア
第三国、第三者による移設が発生した場合に①が作動。第三国、第三者による移設ではなく、納品先が行った移動の場合には工作機械メーカーが定める手順に従って設置状況を確認した後、②の手順となる。なお、検討期間は短かったものの、工作機械のサイズに合わせて2つの画面に対応するなど、細かな点まで考慮した仕様になっている。
この移設検知ソフトウェアを開発したシーイーシーに対し、石田氏は以下の部分を高く評価している。
シーイーシー開発担当者と
綿密な打ち合わせを実施
評価いただいたポイント:提案型の進め方
シーイーシーから提案をいただきながら開発を進めていったことで、2カ月というタイトなスケジュールながらスムーズな開発ができたと思っています。選択肢が設けられた資料を作成していただき、そのなかから我々が選択できるスタイルは非常に仕事が進めやすいと感じました。我々もそういう仕事を心がけているので参考になりました。
評価いただいたポイント:高い開発力
12月にテストを行い、移設を問題なく検知できることなどを確認、無事ソフトウェアが完成しました。専門性、難易度とも高く、自社で開発するとしたら相当な時間を要したでしょう。その開発を短期間にもかかわらず、しっかりと仕上げていただき、大変助かりました。
今後の展開と期待
海外展開の拡大を目指す中、シーイーシーにソフトウェア面のサポートを期待
同社は今回の移設検知ユニット搭載を皮切りに海外展開の拡大を目指している。
「開発した移設検知ソフトウェアは、今後すべての海外向け工作機械の移設検知ユニットに搭載することができます。それを考えると、開発費は安価だったと思います。しかも、今後の製品には移設検知ユニット搭載とアナウンスできるので、大きな販売促進になるのではないかと考えています。シーイーシーには引き続き、ソフトウェアなど付加価値の部分でのサポートを期待しています。今後ともよろしくお願いします。」(岩下氏)
今回、移設検知ユニットを搭載した
工作機械
※製品名・企業名・役職名など、記載の情報は取材時のもので、閲覧時には変更されている可能性があります。
フライス盤メーカーとして数万台に渡る実績を積み重ね、日本の高度経済成長の黒子として多くの企業を支えてきた工作機械メーカー。フライス盤で培ったノウハウを軸に、現在はアルミ長尺材加工機や特殊工作機械・専用機など、顧客の要望に合わせたカスタマイズやオーダーメイドされたNC加工機を中心に製造。航空機分野、建築分野、鉄道分野、自動車分野、環境エネルギー分野など多くの分野でオーダーメイド工作機を展開。
「お客様に当社の工作機械を使っていただき、良い製品をつくっていただく」。株式会社イワシタは、そのお手伝いをどうできるかを大事にしている。
- 法人名
- 株式会社イワシタ
- 創業
- 1949年(昭和24年)4月
- 代表者
- 代表取締役社長 岩下 大介
- 事業内容
- 金属加工機械の設計、製造
- 主要製品
- 長尺NC加工機、アルミ切断機、フライス盤、特殊工作機械・専用機、ハイレシプロ精密研削盤、門形マシニングセンタ
- 従業員数
- 48名(2019年1月現在)
- 本社所在地
- 〒910-2175 福井県福井市円成寺町1-6
- URL
- https://www.iwashita-net.com/