導入の背景・課題
重電分野のものづくりにおけるデータ化のハードル
富士電機株式会社は、1923年の創業以来、エネルギー・環境技術を核とした事業を展開。発電・流通・制御システム、パワーエレクトロニクス機器、産業機器、電子デバイスまで、社会インフラを支える幅広い領域で貢献している。特に近年は「カーボンニュートラル社会」「デジタル社会」の実現に向け、再生可能エネルギーの活用や製造現場のスマート化などの課題解決に積極的に取り組んでいる。
中核拠点の一つである川崎工場は、大型タービンや発電設備などの重電分野の製品を一品ごとに高精度で製造。しかし大型製品を扱うがゆえに、ものづくりにおけるデジタル化推進には固有の課題があった。
エネルギー事業本部 川崎工場 第一製造部 生産技術課 課長の萬田俊氏は、当時の状況と課題を、次のように話す。
「全社で当時、IoTといったデジタル化への取り組みが求められていました。当工場は、非常に大きく、完成させるまでのリードタイムが長い製品を製造するため、何か一つ改善を図ろうとしても、検証に時間がかかり、なかなか効率が上がらない。また、工程における設備や人の動きについて、効率よく実行できているのか、という問いに対する答えが、感覚的にしか把握できていませんでした。そこで、まずは設備や工程の状態をデータで把握しなければならないと考え、“見える化“活動が始まりました」

富士電機株式会社 エネルギー事業本部
川崎工場 第一製造部 生産技術課
課長 萬田 俊氏
選定プロセス
大型重電機器製造特有のデータ収集とスモールスタート可能な点が決め手に
製造現場の「見える化」を推進する上での最初の課題は、多種多様な大型設備の稼働データをどう収集するかであった。
「当時、我々の部署にはデータ収集のためのネットワーク技術に長けている人間がいませんでした。他社事例ではPLCなどの機器と何かを組み合わせてデータを吸い上げる手法がとられていましたが、当社での実施は困難と判断しました」(萬田氏)
そこで同社は、Facteye(ファクティエ)の採用を決断する。Facteyeとは、設備総合効率(OEE)を評価指標に、目標設定から課題の発見と分析、改善策の実行、効果測定までの一連の改善PDCAサイクルを回し、継続的な生産効率向上を実現するソリューションだ。
萬田氏は、採用の決め手を次のように語る。
「我々が保有する設備に速やかにつながり、すぐにデータを吸い上げ、分析が開始できる点が魅力でした。複数の製品と比較検討し、もっとも取り組みやすく、コストも抑えてスモールスタートできると判断しました。特にFacteyeは古い機器にも対応しているなど、将来的な拡張性も高い。また、データを見える化する画面もテンプレートが提供され、ゼロから画面を作る手間も省ける点も効果的でした」
他社では、古い機器を含む多様な設備でのデータ収集は難易度が高く、データを可視化する画面も自分たちで作る必要があった。Facteyeは製造業特化のデータ収集に強く、画面もテンプレートでの提供が可能。設備の違いに左右されずに導入できる点、手間の削減が決め手となった。
川崎工場 第一製造部 生産技術課の西村拓也氏は、Facteyeの技術的な強みは、導入期間の短縮にも大きく貢献したと語る。
「Facteyeは直接各社NCコントローラーと接続でき、詳細なデータ収集が可能です。設備に手を加えることなくポートに挿すだけでデータが収集できることから、2カ月ほどで立ち上げが実現しました」
Facteyeは、同工場で台数の多いファナック製の加工機をはじめ、幅広く各ベンダーのNCコントローラーに適合していることも採用の後押しとなった。さらに、LANで接続できない古い加工機に対しては、I/O(信号線)や電流クランプを使い、稼働状態のデータを取得するオプションも利用可能。シーイーシーは、この「古い機器や多様な設備からのデータ収集」という技術的な壁をFacteyeの柔軟な接続性で解決し、導入期間の短縮にも貢献した。これにより同社は主力機だけでなく工場内全体の約50台の設備に対し、データ収集を順次、発展させることができた。

富士電機株式会社 川崎工場
第一製造部 生産技術課
主任 大槻 俊之氏

富士電機株式会社 川崎工場
第一製造部 生産技術課
西村 拓也氏

導入効果
製造設備全体の進度管理と改善が可能
Facteyeの導入により、これまで感覚的であった工場全体の稼働率の正確な把握が可能となった。萬田氏は、データに基づく具体的な改善事例について述べる。
「機械加工工場は夜間は無人で稼働しています。導入前は夜間にエラーで止まったタイミングが把握できませんでしたが、Facteyeを繋いだことで、それが見えるようになりました。これにより、例えば退勤前に段取りを終わらせた方が全体の生産性が向上するなど、オペレーション変更の裏付けが得られました」
同社では当時、機械加工プログラムの改善にも取り組んだという。
「Facteyeでどのプログラムで何秒動いていたかを集計することで、空運転(エアカット)が多い項目を発見。その動きを変えることで加工時間の短縮につなげました」(西村氏)
Facteyeのデータ収集基盤は、その拡張性を活かし、機械加工だけでなく溶接工程にも展開されている。
「信号線とクランプを使って溶接時の波形を読み取り、稼働、停止をカウントする仕組みを構築しました。現在、各溶接機に順次展開しています」(萬田氏)

Facteye 全体監視
データ活用改善の成功にはシーイーシーの伴走型支援も大きく貢献している。
シーイーシーは富士電機内の現場に同行、工場内での接続調査も実施。実際の加工や溶接時のデータ収集の実現、収集データの活用による現場改善にもつなげた。
シーイーシーの支援について、西村氏は以下のように評価する。
「シーイーシーには、我々に寄り添ったきめ細かな支援をいただいています。導入時には一緒に現場を回り、接続できているか、データが取得できているかを確認してくれました。業界特有の技術にも明るく、設備側で必要な設定なども当社の保全部隊と直接会話いただき、その場で解決しました」

統合効果
MotionBoardとの連携による包括的なデータ「見える化」基盤を確立
同社はFacteyeでのデータ取得を進める中、2カ月ほど遅れてウイングアーク1stのMotionBoardの導入を決断。この理由を、萬田氏はこう説明する。
「Facteyeで取得した各設備の稼働データと生産計画とを掛け合わせ、進捗度合いを1画面で見せたいという狙いがありました。また、Excelで個別に集計、管理しているさまざまな管理データも統合し、停止や不良などのボトルネックの特定や、工場全体での生産性向上につなげたかったのです」
MotionBoardは、Facteyeで収集した製造現場の稼働データと連携することで、単なる現場の稼働監視を超えた統合的な効果を創出する。当初はCSVデータを経由して連携されていたが、同社の相談を受けたウイングアークとシーイーシーの両社は協働し、連携を強化。現在では連携ソリューションとして提供されている。
「MotionBoardと連携することで、Facteyeの設備稼働データと現場日報などのデータと組み合わせ、これまで分からなかった停止や不良の要因など、ボトルネックの特定が可能になりました。生産実績と計画の進捗度合いを、Facteyeの稼働データとともに一画面で見せることもできる。また、Facteyeが提供する正確な稼働率データがあることで、それをMotionBoardを通じて月次の経営報告にも分かりやすく活用できる。これまでは稼働率の計算に時間がかかっていましたが、その原因を探る、対策を考える時間に費やせるようになりました。次の手を打つための検討時間は、体感で3割近く、短縮されました」(萬田氏)

Facteye 稼働実績

Facteye MotionBoard 表示画面(イメージ)
今後・期待
今後もデータ活用基盤の活用範囲の拡大を推進
現在、FacteyeとMotionBoardを主軸としたデータ活用基盤は、富士電機川崎工場の事業展開を支える「拠り所」となっており、工場内で重要なデータ活用ツールへと広がりを見せていると、萬田氏は語る。
最後に萬田氏は、ウイングアークとシーイーシー両社への期待として、次のように結んだ。
「かれこれ10年近いお付き合いになります。試行錯誤を重ねてやってこられたのは、両社のおかげだと感謝しています。これからも意欲的に新たなテーマに取り組みたいと考えていますので、お互いWin-Winの関係が築けるよう、引き続いての支援を期待します」






