「RaLC」
コマツ(株式会社小松製作所) 様
物流改善に「RaLC」の位置情報管理を活用。フォークリフトの位置、動線の把握によりコスト削減を目指す。
ウォッチ事業で蓄積した超微細・精密加工技術を基盤に、情報関連機器、電子デバイス、精密機器にわたる広範な事業を展開するセイコーエプソン株式会社様(以下、エプソン)。最近では、08年6月に「環境ビジョン2050」を掲げ、2050年までに商品とサービスのライフサイクルにわたるCO2排出量を10分の1とし、地域社会とともに生物多様性の修復と保全を行うなど、積極的に環境活動に対する取り組みも行っています。
実際に物流コストの削減は、多くの企業が長年取り組んでいるが、その手法を見ると、『前年比で何%下げて欲しい』といった総額・単価交渉が少なくない。尾中氏は「物流コストの中身をきちんと可視化することで、具体的に荷主と物流事業者それぞれにとって、サービス・コストのバランスが明確になり、双方にとってWIN-WINの関係になっていくはず」と期待する。
従来の物流改善では、いくつかの改善案を出しながらも、数値化に基づいた比較検証ができないまま、どれかに絞らざるを得ないことがあったという。また、IE(インダストリアルエンジニアリング)の観点から、ストップウォッチを用いた物流ABC分析が主流となっていた。このため、「約30拠点におよぶ全拠点で莫大な工数をかけて、定期的に観測していくことが困難で、こうした課題を解消するためにも、RaLCの導入に踏み切りました」(尾中氏)。
このように物流業務の改革・改善を推進するため、エプソンは2007年10月からシーイーシーの3Dシミュレーションソフト「RaLC」を導入。作業の数値化、見える化に基づいたボトルネック箇所の検証・倉庫の最適配置の検討・最適動線の検討を行っている。主な活用方法として尾中氏は、「現状のレイアウト、作業員数、作業ごとの平均投入量・時間、作業手順、作業標準時間などを入力する。いくつかの改善案に基づき、レイアウト変更や動線変更、作業員数、投入量をシミュレーションし、どの案が最適かを判断しています。定量的な分析も可能で、物流ABC分析・EIQ分析なども行うことができます」と評価する。
・RaLC活用の狙い
製造を最重要視したレイアウトによって、倉庫とその関連する施設が、製造エリア周辺の4ヵ所に分散。このため、関連施設との往来に時間がかかってしまっていた。そこで、分散した施設の集約化と効率化が可能かどうかについて事前検証を実施。
・検証結果
(1)RaLCで検証した最良案により、作業員の稼動時間が1日6.3時間、動線距離が1日4km短縮されるとのデータが得られた。
(2)この結果を持って関連会社の施設管理責任者への改善依頼を実現。レイアウト変更により作業者を1名減らすことができるという具体的な数値効果を示し、レイアウト変更を依頼することができた。
・RaLC活用の狙い
作業員の人員配置と勤務時間・物量・1日4~5回あるピッキング開始時間の関係をシミュレーションにより明らかにし、夜勤をなくした場合に出荷時間に支障が出ないかの事前検証を実施。
・検証結果
(1)作業員の勤務体系・人数・ピッキング作業の開始時間をできる限り前倒しにすることにより、現状の仕組みを大きく変えずに夜勤勤務をなくしても、出荷時間に支障が出ないことが判明。その結果を受けて、作業員の勤務体制変更を実施。大幅な人件費削減を実現した。
(2)さらに、現行のピッキング方式(シングルピッキング)に、一部トータルピッキングを混在させることにより、大幅な時間短縮が図られることが判明。現在、ピッキング方式の変更も検討中。
「RaLCによって現場を絶対値で完全に再現することは難しい面もあるが、相対値での評価には十分使える」(尾中氏)
RaLCを使ってシミュレーション検証の実績を重ねた上で、ボトルネック箇所の見える化によって情報の共有化を図り、作業改善を進めていく取り組みを進めている。
エプソンでは、RaLCを活用し、今後は棚位置・在庫・入出荷計画表まで踏み込んだ本格的な物流シミュレーションの活用を検討。日々の物流動向からPDCAで回していくことも想定している。また現行は個別の活用となっているが、WMSやマテハン機器などとの連携により、より高度な利用も考えている。
※文中に記載の会社名、役職名等は取材当時のものです。
お電話でのお問い合わせ(受付時間:平日9:00-17:45)
Webからのお問い合わせ