導入事例:RaLC
株式会社セイノー情報サービス 様
物流コンサルティングの取り組みに「RaLC」を活用。
"提案型営業"のツールとして高い効果を発揮。
国内最大規模の路線トラック網を持つ西濃運輸のオンラインネットワークと輸送管理システムの管理・運用を行う電算室を前身として1984年に分離独立。設立以来、西濃運輸のIT戦略部門並びに物流IT専門集団として物流ノウハウやIT技術を活かし、現場重視・課題解決型のソリューションを展開しています。
事業領域は幅広く、経営に貢献するLLPサービスを中心に、各企業様への物流コンサルティング、IT構築、そして実運用までサポートするなど、物流業務全般について幅広くサービスを提供しています。
導入前の課題
- 物流設備を持たない「ノンアセット型3PL」としての強みを発揮したかった。
- 物流改善の提案において、お客様に説得力のある改善効果、改善後のイメージを伝えたかった。
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導入ポイント・導入効果
- 現状の物流コスト・作業時間と改善案の比較によってお客様に最適な物流改善提案ができるようになった。
- お客様の物流担当だけでなく、経営層も含めて物流の問題点を見える化できるようになった。
- 営業の提案活動を増やし、プレゼンテーション時の負荷を大幅に軽減した。
お客様の“真の物流パートナー”としての存在感を示す
独自の3PLサービスを切り口にお客様のロジスティクスの最適解を追求
製造業、流通業をはじめとする荷主企業は、経営資源の集中により、物流業務のアウトソーシングを進めている。一方の物流事業者を取り巻く環境は、新規参入の増加などによって競争が激化している。
「勝ち組」と「負け組」の二極化が加速する中、物流事業者が「勝ち組」として生き残るには、単なる荷主の下請けではなく、物流パートナーとして存在感を示すことが求められていた。
「リーマンショック以前から物流事業者は常に厳しい環境に囲まれています。従来型の提供サービスや営業手法では、この環境の中を生き残ることは困難です。特に倉庫や輸送車両を持たないノンアセット型の当社にとって、輸送業者や倉庫業者など競合他社と同じ土俵にあがっても、コスト勝負になってしまうという危機感を持っていました」とLLPオペレーション部 部長の上野 善明氏は語る。
そんな同社がいち早く取り組んできたのが、物流革新を実現するための営業手法の強化だった。2003年頃に物流コンサルティングビジネス、物流ソリューションビジネスの拡大、営業推進のための物流技術の整備とロジスティクススペシャリストの養成を目的に「新ビジネス事業戦略構築プロジェクト」がスタートした。
「荷主との信頼関係をより強固なものとするためには、これまでの営業手法からの脱却が欠かせませんでした。そのためには、荷主の立場で経営から物流までの広い課題を理解し、それに見合ったソリューションを提案する」(上野氏)ことが、“真のパートナー”となる最善の策であった。 お客様からRFP(見積提案依頼書)が出てから、要件・仕様に合った提案をするのではなく、荷主とともに輸送や保管などの庫内作業のほか、流通加工、在庫管理、サービスレベルの向上、コストダウンといった物流機能を総合的に考え、提案するところまでを目指した。
これにはもちろん、同社の原点でもあるITソリューションも含まれている。
「お客様の現状分析と課題の抽出によって、在るべき姿(目標)に落としこんでいくコンサルティング。次にITも含めた変革構築プロジェクトの開発・実行フェーズ。さらにロジスティクス全体を捉えた物流マネジメントとPDCAサイクルによる継続的な運用改善していく、この3つの段階を総称したものをLLPP(Lead Logistics Provider)サービスと位置づけています」と上野氏は解説する。
2004年からは従来のコンサルティングサービス、ロジスティクスITサービスに加えて、改善後の定期的な定量チェック、環境変化に対する適正なオペレーションのマネジメントなどPDCAを継続的に実施する物流技術サービスを展開している。
株式会社セイノー情報サービス
LLPオペレーション部 部長
上野 善明氏
RaLC 導入の狙い/効果
コスト・時間・リスクにとらわれず物流改革の最適シナリオを検証コミュニケーションツールに
同社がRaLCを選んだ理由の1つ目が、物流センターに特化し、マテハン機器だけでなく作業員の動きを含め、実データを用いた詳細なシミュレーションが可能なことだった。2つ目が、3D動画モデルの作成によって営業ツールとして分かりやすくお客様に説明ができることが挙げられる。物流センター内のレイアウトを変えるのは時間がかかってしまう。単純に場所を変えるパターンもあれば、マテハン機器を入れる場合もある。後者は時間もコストもかかることが簡単に予測されるが、「実際にRaLCで検証して、お客様にシミュレーションパターンをいくつも提示できるため、検討時間とコストを節約でき、物流投資に対するリスク軽減に役立っています」と上野氏は評価する。
実際に自社で物流がコントロールできていなかったり、コスト構造や納期が見えないなど物流面に課題を抱える企業は少なくない。
「ロジスティクスの改善が重要なことは認識しているものの、現状の把握と今の状況をどう改善していけばいいのか分からない」というお客様からの声も。同社では、2002年からシーイーシーの物流業務最適化支援システム「RaLC」を活用しているが、いきなり改善に向けたフェーズに入るのでなく、お客様の課題を抽出するところから始まる。
「ひと口に物流改善といっても、さまざまな課題が潜んでいます。お客様から『在庫が多くなってスペースや運搬、それにかかる管理コストを抑えたい』という要望があっても、それを鵜呑みにしてしまうのではなく、物流センターの運営に課題がないか、納品までのリードタイムは適正だろうか―などいくつものパターンを想定し、改善策をあてはめていく必要があります」と上野氏。
現在、同社のLLPサービスにおいて、RaLCはコンサルティングの一つとして事前の物流診断で活用されている。
RaLCを使ってお客様の物流業務を可視化し、システム構築段階、運用段階それぞれで、現状を把握し、改善案を実際に導入できるかどうかの検証に役立てている。
「お客様の物流センターの改築や増設、新設に向けて、レイアウト、作業プロセス、要員の配置など、事前のコンサルティングで課題を抽出し、これができて初めてRaLCで改善モデルができます」(上野氏)。
同社のWeb簡易物流診断「FOCUS」で物流の管理体制やコスト、受発注、在庫、倉庫、輸配送管理などを分析できるサービスと並行しながら、現状の物流センターを可視化し、ムダを見つけ出していく。そこからRaLCのモデリングで一つひとつの作業を再現・把握し、1)作業の順序や必要性、非効率な工程を洗い出し、2)お客様に最適な具体的な改善策を、現状の物流コストとの比較を含めて提案する―という流れで展開している。
今後の展望について
物流を起点にお客様の経営戦略を支え全体最適による改善を生み出していく
RaLCを活用するにあたって、重要なファクターが「改善モデルの精度」だという。データを見たなかで物流の特性から見えてくるものもあるが、現場の運用調査、ヒアリングなどによって入手した情報が重要になる。その上で、「物流分析を通じて現状の課題を整理します。その後、現場から出てきたデータをもとに現状とRaLCのモデリングとの差を明らかにするためにも、改善モデルの精度が重要になってきます」(上野氏)。現在、同社では、業務プロセスや工程ごとのフェーズに応じて、RaLCのモデル作成にかかる時間・技術レベルなどを一覧・メニュー化している。いわばRaLCの適用プロセスを標準化・可視化することによって、提案の品質と技術、スピードの向上を図っている。
また、グローバル化が進み物流管理がますます複雑化し、課題の多くは物流部門だけで解決できるとは限らなくなってきた。これまで卸を中心に展開していた食品業のお客様が、小売やネット通販に販売ルートを広げたケースでは、トレーサビリティなど複雑な対応が必要になってくる。「お客様の物流に関わるコスト削減を目指したとき、倉庫や配送に関する業務改善の視点に加え、調達のフェーズから見直すことで、物流拠点の統廃合などに発展するケースもあります。もちろん、それだけでなく開発、製造、販売を含めたお客様のマーチャンダイジングや販売促進にまで踏み込んだ提案型営業が求められています」と上野氏は語り、現在ではお客様の物流担当者だけでなく、横断的に経営企画担当部門とも関与することが多いという。
長年にわたり物流と向き合ってきたことによる“現場力”に裏づけされたノウハウをもとに、最適な物流改善を提案するセイノー情報サービス。今後について上野氏は、「荷主のニーズに応えるだけにとどまらず、新しい物流の仕組みそのものを変革できる提案力を強化していきたい。荷主のロジスティクス部門をIT提供も含めたフルアウトソースできてこそ、真の3PLではないでしょうか」と期待を込めて話した。
※製品名・企業名・役職名など、記載の情報は取材時のもので、閲覧時には変更されている可能性があります。