事業概要
アパレル業界に特化した物流事業についてお聞かせください。
当社の主力事業であるアパレル物流は商品の入荷から店頭納品にいたるまでの多彩な流通加工すべてを代行します。また、ネット通販特有の小口の動きやラッピング、刺繍、修理などの手間のかかる対応も得意としています。
入荷した商品は、納品書と照らし合わせて、品番・カラー・サイズごとに数量を正確にチェックして、在庫を管理。各店舗からのオーダーを受けて、必要な数量を、必要な場所に、必要な時にお届けしています。入荷~保管~出荷という流れは、どこの物流企業も変わりませんが、ファッション物流の場合は、同一の商品でもカラー・サイズ・品番が異なる他、ハンガーにかかった状態で入荷するものもあれば、段ボール・パレットで入荷するものもあるなど、さまざまな形に対応しなければなりません。
また、出荷前には針など異物の混入をチェックする検針作業、ブランド下げ札の取り付けといったアパレル独自の物流加工が必要となります。当社は、アパレル物流に専門特化することで36年の実績を誇り、お客様の多種多様な要望に応えています。
株式会社オーティーエス
代表取締役社長 田中 優一郎氏
導入前の背景
導入前の状況についてお聞かせください。
冒頭でもご説明させていただいた通り、当社の物流サービスはファッション・アパレル業界に特化しています。カラーやサイズなどが細かく分かれた少量多品種生産が基本の業界ですから、物流業務も非常に細分化されてしまうのが特徴です。
自動化や省力化、ロボット化が非常に難しい領域であり、物流品質維持のためにも人の手による作業が絶対的に必要です。ある意味で効率が非常に悪い仕事なのですが、それがファッション分野に特化している当社の強みでもあります。
人の手による作業が欠かせない中で、いかにして効率を上げていくのか。収益性の改善を図る上では避けて通れない課題であり、創業以来ずっと向き合ってきた課題でもあります。改善のために取り組んだプロジェクトの1つが「人時プロジェクト」です。スタッフ一人ひとり、作業一つひとつの効率を上げるため、仕事量や時間を可視化することを目的としています。
計測の対象となるスタッフ数は800名以上。全員の作業をすべてアナログで集計するわけですから、相当な労力が必要とされました。ペンと紙を使った記録には、かなりの無理があったと思います。
ツール検討のきっかけをお聞かせください。
やはり一番の目的は、収益性の向上のためです。スタッフ1人、作業1つにどれくらいのコストがかかっているのかを正確に把握することは、経営においても非常に重要です。お客様からいただいている料金との間にギャップがないのか、適正な価格でサービスを提供できているのかを判断する上で、コストの把握は不可欠です。
しかし、計測には相当な労力がかかってしまうことが大きなネックでした。現場で作業をしているスタッフたちも、実務にプラスアルファで発生する記録作業に割く労力が大きく、気乗りし乗りしないようです。記録していたり・していなかったりと計測作業にムラが出てしまい、正確な数字の収集・分析からはほど遠いものとなってしまいます。
そこで、アナログな計測作業をデジタル化し、より精緻なデータを基にした分析を行いたいと考え、シーイーシーのSmartLogger導入を依頼しました。
ツール選定のポイントを教えてください。
シーイーシーを含めて、3社のトライアルを実施した上で、SmartLoggerの導入を選択しました。他社製品のうち1つは、作業を計測する機器が有線仕様であったため、早々に候補から外しました。大人数が作業・移動する現場では、有線の機器を扱うのは現実的ではありません。もう1社に関しては、システムのカスタマイズに伴って大きな費用が追加で必要となる点が問題でした。
その点、シーイーシーから提案されたSmartLoggerは、我々の要望を細かく満たすものでした。現場での計測も手軽で、作業の手を止めてしまうような心配もありません。
アナログで計測していた頃は、スタッフが作業開始前に時計で時間を確認してメモを取り、作業が終われば再び時計で時間を確認してメモを取るというやり方です。計測の手間から記載回数が減ってしまったり、本来であれば1分単位で計測したいところですが、どうしても5分10分単位の計測になってしまったり、いろいろと課題がありました。
こうした作業負担を一気に解消できた点が、SmartLoggerを選んだ理由の1つです。
SmartLoggerの導入にあたっては、当社の業務・フローに応じて、階層の追加や分析画面の帳票類の追加など、システムのカスタマイズに細かく応えていただきました。スタッフがデジタル化への抵抗感を最小限に抑えるように、当社と二人三脚で進めていくシーイーシーの姿勢に感謝しています。
また、役員へのプレゼンの際には、シーイーシーの営業担当者も同席してくださり、準備段階から支援いただけたことも非常にありがたいことでした。
経営層への稟議を通す際は、「想い」「社員の負荷」「メリット」「予算・試算」の4つの観点を明確にすることで、承認が得られました。システム導入には費用がかかりますが、単純作業に要する時間を減らし、考える時間を増やせる点に大きな意味があると考えていましたから、スムーズに承認が下りたのだと思います。
作業者がSmartLoggerで作業記録を行っている
導入に向けた社内の反応はいかがでしたか?
社内ネットワークへの負荷も事前に確認できていましたし、アンテナの設置も必要ないことが分かっていました。過去に導入した他のシステムと比べても、負荷はさほど変わらなかった印象です。
データに関しては、毎日膨大な量を収集しても、100年分ぐらいは保持できるということでしたから、そのあたりの不安もありませんでした。むしろ、膨大なデータを自社で管理するのは大変ですから、システム自体がクラウドで良かったと思っています。
株式会社オーティーエス
葛西センター
副センター長 村石 宇広氏
導入効果と新たな課題
実際に導入されていかがでしたか?
現場を統括している社員たちからは非常に好評で、作業が楽になったことをとても喜んでくれました。集計作業がExcelで容易に行えるようになった点がとても大きかったと思います。また、パディさん(パートスタッフの社内での呼称)の反応も上々です。
パディさんの年齢は20代から70代までと幅広いのですが、特に若い世代からは大変高く評価されていて、計測作業や生産性の分析をデジタル化することへの理解も深まっています。
ただ、年齢の高い層では、スマートフォンの使い方に慣れない人が多く、引き続き取り組まなければいけない課題も見つかりましたが、総じてデジタル化は年齢を問わず、すべてのパディさんにとっても良い効果をもたらしています。
個々の生産性が可視化されることで、公正に評価できるようになりますから、年1回の時給改定などにつなげていきたいと考えています。
クラウドサービス導入に向け事前に準備されたことはありますか?
今まではできなかった規模で集計できるようになり、細かな数値も正確に把握できています。現場業務は30以上の工程がありますが、従来は主な工程しか計測していませんでした。現場への負担を考えても、主力作業だけでめいっぱいという状態だったからです。それが今では対象の作業を細かく切り替えながら、正確な計測が可能となっています。
導入効果はいかがでしたか?
今まではできなかった規模で集計できるようになり、細かな数値も正確に把握できています。現場業務は30以上の工程がありますが、従来は主な工程しか計測していませんでした。現場への負担を考えても、主力作業だけでめいっぱいという状態だったからです。それが今では対象の作業を細かく切り替えながら、正確な計測が可能となっています。
集計作業に関しては、1カ月で68時間かかっていたものがゼロになりました。空いた時間は改善活動などに使えるようになったことも大きかったと思います。その他にも、計測用に使っていた紙やインクの費用、さらには集計書類の廃棄にかかる時間なども削減できています。
生産性の可視化で今後どのような変化を期待されますか?
紙の量でいえば1カ月あたり1,833枚、年間では2万2,000枚、重量にして88kg分の削減になる見込みです。非常に大きなコスト削減効果が得られただけでなく、SDGsの観点から見ても大きな効果と感じています。
人時を可視化することは、一種のゲーム性を取り入れる感覚です。組織の中核を担う20代~40代というのは、小さな頃からゲームに接してきた世代といえます。ヒットポイントや技の効果などの数値やパラメーターはすべて画面内に集約して表示され、それを見ながらゲームをするから面白いのです。一方、仕事の現場では、数値やデータとして見えないものが多々あります。生産性や効率は、その最たるもの。効率を改善しなければいけないが、正確な数値が分からないのです。改善をしたとしても、その効果が見えないわけですから、やっていても面白くありません。
そういった観点で考えても、可視化は非常に有効な手段です。見えなかったものが見えるからこそゲーム性が生まれ、やってみて大きな効果があったこと、あまり効果がなかったことを明確に理解できるようになります。現場の仕事は単純だったり、つまらなかったりするものです。その状況を少しでも好転させ、楽しめるものにしてきたいと考えています。
理想は、時間が過ぎるのがあっという間に感じる職場です。時間に追われるのではなく、時間を忘れて集中して仕事に取り組める。そんな環境づくりにも、生産性の可視化は非常に大きな意味があることだと思います。
株式会社オーティーエス
マーケティング部
営業企画室 課長代理 櫻庭 岳宗氏
最後に、シーイーシーにこれから期待することをお聞かせください。
SmartLoggerで蓄積したデータを多角的に活用する方法なども、ぜひ提案していただきたいです。現在はPower BIを導入していますが、SmartLoggerを導入したことで、より精度の高い分析ツールの利用を検討しています。より精緻なデータがあれば、お客様との価格交渉の場面で根拠として提示できるなど、新しい形でのデータの活用方法が実現できるのではないかと期待しています。
また、今回のSmartLoggerの導入に際して、合計230台のスマートフォンを購入して現場で利用しています。現在は、作業時間や生産性を計測するためのデータ取得に利用していますが、今後は用途をさらに拡大してきたいと考えています。
例えば、いつでもどこからでもスマートフォンで作業マニュアルが確認できる仕組み。入社したてのパディさんにとって、とても心強いツールとなるのではないでしょうか。あるいは、スマートフォンのカメラ機能とAI技術を使って、商品の不良品を画像で報告する仕組み。商品は少量多品種のため実現には難しいところがありますが、外観検品に対するお客様のご要望が厳しくなっていますから、実現すれば非常に大きな効果を発揮すると思います。
株式会社オーティーエス 管理部
課長 坂巻 道昭氏